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ロレックス「ミルガウス」とは?歴史と魅力、人気モデルを紹介!

サブマリーナーやデイトナなど、スポーツモデルが大人気のロレックスの中で、「ミルガウス」は定番外しともいわれるモデルです。

 

ミルガウスは、高い機能性や独自のデザインから、世界中に根強いファンが存在します。個体数が少ないプレミアムモデルもあり、コレクターアイテムとしても魅力的です。

 

今回は、そんなミルガウスの特徴や魅力、人気モデルと価格などについて解説します。

ロレックスの変わり種モデル「ミルガウス」とは?

ミルガウスは2023年の生産終了まで、半世紀以上続いたベストセラーモデルです。ロレックスといえば、ダイバーズウォッチのサブマリーナーやレーシングウォッチのデイトナなど、アウトドア向けのイメージが強いモデルが多くあります。

 

ミルガウスはそんなロレックスのシリーズで唯一、科学者や技術者、医師、エンジニアなどの磁気を帯びやすい環境で働く人々向けに開発されました。

 

そのため、ほかのモデルにはない特徴があり、「変わり種」「定番外し」などと評されることもあります。まずは、そんなミルガウスの特徴を紹介します。

特徴1|磁気性の高いケース

ミルガウスの大きな特徴は、非常に耐磁性が高いことです。そもそもロレックスの腕時計は、どのモデルも耐磁性のあるムーブメントが採用されています。

 

しかし、ミルガウスの場合は耐磁性のあるムーブメントに加え、高性能磁気遮断システム搭載のケースを搭載しています。

 

さらにオイスターケース内にも磁気シールドを追加し、磁気を引き受け外部に放出することで、内部の部品を守るように設計されているのです。

特徴2|Cal.3131を搭載(2007年以降)

ミルガウスには、Cal.3131という常磁性素材で作られた専用ムーブメントが搭載されているのも特徴です。常磁性素材とは、磁場にさらされると磁化して磁場が消えると通常の金属に戻る特殊素材のことを指します。

 

腕時計の内部の部品は金属製が多く、磁気の影響を受けがちです。部品が磁気を帯びると、腕時計の精度が狂って正確な時刻を表示できなくなってしまいます。

 

しかし、ミルガウスのムーブメントに使われている常磁性素材なら、磁気を帯びても時計の精度が狂う心配がありません。

特徴3|イナズマ針を採用(一部のモデル)

ミルガウスの特徴として、磁力をイメージしたイナズマ型の秒針もあります。これはミルガウスの初代Ref.6541と3代目Ref.116400のみに搭載された秒針で、科学者への敬意を示しているといわれています。

 

ちなみにRef.6541のイナズマ針はシルバーでしたが、Ref.116400ではオレンジに変更されました。

ロレックス「ミルガウス」の歴史

高い耐磁性やイナズマ針など、機能面・デザイン面ともにほかのシリーズと一線を画すミルガウスは、どのように誕生したのでしょうか。ここでは、ミルガウスの歴史を紹介します。

ミルガウスの誕生と由来

ミルガウスが誕生したのは1956年です。当時のロレックスは、サブマリーナーやGMTマスターなどの深海や空、洞窟といった過酷な環境に耐え抜く腕時計を開発していました。

 

その次のステップとして着手したのが、高磁気の特殊な環境でも普段通りに使用できる腕時計の開発です。

 

その結果誕生した1,000ガウスの耐磁性を備えた腕時計は、フランス語の「1,000」を意味する”ミル”と磁束密度の単位である”ガウス”を組み合わせて「ミルガウス」と名付けられました。

 

ちなみに「1,000ガウス=約80,000A/m」です。一般的な日用品の磁力の目安をみてみましょう。

10ガウス ドライヤー・電気毛布
30ガウス テレビ用スピーカー
50ガウス 電気カミソリ
100ガウス ノートパソコン・大型スピーカー
200ガウス 携帯電話のスピーカー
400ガウス タブレット端末
600~700ガウス 磁気敷布・磁石付きブレスレット
700~1,000ガウス 磁石付き絆創膏
1,000~1,300ガウス 磁気腹巻・磁気ネックレス

この通り、ミルガウスは多くの日用品が放つ磁力を遥かに上回る耐磁性を備えていることがわかります。

 

なお、ミルガウスの開発には同時期に設立された欧州原子核研究機構(CERN)も携わっており、リリース後にCERNはもちろん、多くのプロフェッショナルもミルガウスを愛用しました。

ミルガウスの生産中止

多くの技術者に愛されたミルガウスですが、販売当時の1950~1970年代ごろは目に見えない磁気の認知度が低く、耐磁性の重要性を多くの人が理解していませんでした。

 

そのためミルガウスの魅力が一般に伝わりきれず、1987年にはミルガウスの生産が一時的にストップされました。

ミルガウスの復活と進化

一般受けせず生産がストップしていたミルガウスですが、2007年に復活を遂げます。このころには携帯電話やPCなどの磁気を放つ日用品が増え、腕時計に磁気対策を施すブランドが増加していたためです。

 

例えばパテックフィリップは、磁気対策としてシリコン素材のヒゲゼンマイを取り入れています。

 

ロレックスもヒゲゼンマイの改良を実施しましたが、シリコン素材にするのではなく、パラクロムヒゲゼンマイを独自開発しました。

 

パラクロム合金はニオブやハフニウムなどの素材を用いており、耐磁性と温度特性(温度によって物理的な特性が変化する性質)を兼ね備えた素材です。見た目も美しく、現在ではロレックスのほぼすべてのムーブメントにパラクロムヒゲゼンマイが実装されています。

 

こうして再び日の目をみたミルガウスですが、やはりほかのモデルと比較すると需要が限定的であったため、2023年に生産が終了されました。とはいえ、1度復活を果たしたモデルなので、いずれ生産が再開されるのではないかと期待されています。

ロレックス「ミルガウス」の全モデルと系譜

1956年に登場し、長い歴史を刻んできたミルガウスにはいくつかのモデルが存在します。ここでは、ミルガウスの全モデルと系譜を紹介します。

1956年~1960年代前半|Ref.6541

初代ミルガウス Ref.6541が登場したのは1956年です。当初は回転ベゼルが搭載されていましたが、途中でポリッシュ仕上げのスムースベゼルに変更されています。

 

ムーブメントはCal.1065M・Cal.1066M・Cal.1080と3回変更されましたが、いずれもミルガウス用に作られたものでした。パワーリザーブは約48時間で、50mの防水機能も備えています。

 

初代のデザイン面での注目ポイントは、シルバーのイナズマ針です。ケース径は37mm、ダイヤルはブラックで、サブマリーナーを思わせるドットインデックスが採用されています。

1964年~1990年前後|Ref.1019

第二世代のミルガウスRef.1019はデザインが大幅に変更され、特徴的なイナズマ針がなくなりました。ダイヤルはシルバーまたはブラックで、ドットインデックスからバーインデックスに変更されています。

 

さらに回転ベゼルもなく、その当時のエアキングやエクスプローラーIのようなシンプルな外観に仕上げられているのが特徴です。ケース径が37mm、防水性能が50m防水という点は初代と変わりません。

 

ムーブメントはやはりミルガウス仕様のCal.1580を搭載、常磁性素材の部品を使用し、耐磁シールドを組み込んで耐磁性を強化しています。パワーリザーブは初代と同じく約48時間です。1970年代には秒針を止めるハック機能も実装され、時刻合わせが楽になりました。

 

なお、初期個体にのみヘアライン仕上げの(ダイアルに縦のラインが入った)文字盤が存在しますが、希少性が非常に高いためコレクターが多く入手が困難です。

2007年~2015年頃|Ref.116400

1度生産が終了したミルガウスですが、2007年に復活しRef.116400が販売されました。第三世代にあたるRef.116400は、オレンジのイナズマ針やスムースベゼルなど、初代と第二世代を組み合わせたようなデザインが特徴です。

 

発売当初、文字盤はブラックとホワイトの2種類がありました。ホワイト文字盤のモデルは、ホワイト×オレンジのカラーリングから「トロピカルマンゴー」の愛称が付けられています。

 

機能面ではケース径が40mmと大きくなり厚みが出た代わりに、防水機能が50mから100m防水にアップしました。パワーリザーブは約48時間と変わりなく、ポリッシュ仕上げで高級感が演出されています。

 

ブラック文字盤のモデルは2015年に、ホワイト文字盤のモデルは2016年に順次生産終了となりました。

2007年~2023年|Ref.116400GV

Ref.116400GVは、2007年のRef.116400発売の際に発表されたミルガウス誕生50周年のアニバーサリーモデルです。

 

コーポレートカラーであるグリーンのサファイアクリスタルの風防にオレンジのイナズマ針が印象的で、発表時には多くの注目を集めました。

 

なお、ロレックスの腕時計は、2000年ごろから風防の6時の位置に偽造防止目的で王冠の透かしマークが刻まれるようになりましたが、Ref.116400GVには入っていません。

 

「グリーンのサファイアクリスタルの耐久性を考慮した結果」「色合いを損なわないため」など諸説ありますが理由は不明です。

 

また、Ref.116400GVはインデックスの仕様も他のモデルとは異なります。他のモデルはインデックスが同じ色に統一されていますが、Ref.116400GVは3時・6時・9時のインデックスのみオレンジ、そのほかはホワイトと2カラーが使用されているのです。

 

この色使いは、アズーロ・エ・マローネ(イタリアンスタイルの青系×茶系の組み合わせ)を取り入れたといわれています。

 

文字盤のカラーはブラックでしたが、2014年に「Zブルー」が追加されました。Zブルーとはジルコニウムという光沢のある金属に下処理とメッキ加工を行い、青い色味を引き出したカラーです。

 

Zブルーの文字盤にホワイトで統一されたインデックスが美しく、ブラック文字盤よりも人気が高いため相場価格にも差が出ています。

 

機能面ではミルガウスらしさを忘れておらず、ムーブメントにはブルーパラクロムヒゲゼンマイ入りのCal.3131を採用しています。さらに、インナーケースで磁気を外部に受け流す耐磁ケースも実装し、高い耐磁性を実現しました。

 

ケース径はRef.116400と同じく40mm、厚みのあるケースで防水機能は100mに向上しています。パワーリザーブは約48時間です。

 

Ref.116400GV は2023年に廃番となり、それとともにミルガウスはロレックスのラインアップから姿を消しました。

ロレックス「ミルガウス」の魅力

ここでは、誕生の経緯やデザインなどからロレックスの「変わり種」と評されるミルガウスの魅力を、より詳しく紹介します。

人と被りにくい

ミルガウスの魅力のひとつが人と被りにくいデザインです。特に新しいモデルは、Ref.116400のホワイト×オレンジやRef.116400GVのグリーンサファイアクリスタルとZブルーの文字盤のように、さまざまなカラーが取り入れられています。

 

さらに初代と第三世代にはイナズマ針があしらわれるなど、ロレックスのモデルではあまり見かけないデザインで、色鮮やかなモデルを好む方に選ばれています。色使いやデザインは斬新なものの、時計のフォルムはシンプルで派手すぎないのもポイントです。

幅広いシーンに馴染む

ロレックスの腕時計は、一目見てロレックスとわかるような「ロレックスらしさ」に溢れるモデルも少なくありません。それが魅力でもある一方で、ビジネスシーンやフォーマルシーンで合わせにくいというデメリットがあります。

 

ミルガウスはロレックスのなかでは個性的ですが、シンプルなデザインなので馴染みやすく、さまざまなシーンで活用できます。

ロレックス「ミルガウス」の人気モデルと価格

最後にミルガウスの人気モデルと実勢価格を紹介します。ミルガウスの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

 

※2024年12月時点

Ref.116400GV Zブルー

ミルガウスの人気モデルといえば、やはりグリーンサファイアクリスタルとブルーの文字盤が特徴的な「Ref.116400GV Zブルー」です。

 

青く宝石のように輝く文字盤にはオレンジのイナズマ針と白のインデックスがあしらわれ、一見カジュアルな配色でありながら上品な雰囲気を保っています。Ref.116400GV Zブルーの実勢価格は170万円〜190万円前後です。

Ref.116400GV 黒

Ref.116400GV Zブルーと同じアニバーサリーモデルの「Ref.116400GV 黒」も人気が高いモデルです。

 

ブラックの文字盤にアズーロ・エ・マローネを取り入れたといわれるホワイト×オレンジのインデックスが配置されているのが特徴で、より個性的な1本を求める方に向いています。

 

Ref.116400GV 黒の実勢価格は130万円〜160万円前後で、Ref.116400GV Zブルーと比較するとやや安めです。

 

なお、Ref.116400GV Zブルー・ブラックともに2023年に生産が終了していることから、今後価格が上昇する可能性もあります。

Ref.1019

第二世代のミルガウス、Ref.1019も人気があります。初代の特徴であったイナズマ針や回転ベゼルが取り払われ、文字盤もブラックまたはシルバーと、当時のエアキングやエクスプローラーIを思わせる非常にシンプルなデザインになりました。

 

Ref.1019は30年ほど製造が続けられたモデルであるため、生産終了までに何度かマイナーチェンジが行われています。そのうちヘアライン仕上げの文字盤が採用されている初期個体は、希少性の高さからコレクターアイテムとしての価値も高まっています。

 

状態にもよりますが、貴重なモデルであるため実勢価格は500万円前後と高額で取引されており、入手難易度がやや高めです。

Ref.6541

1987年の1度目の廃盤以前に販売されていたミルガウスは、そもそもの個体数が少ないため大変希少です。特に初代Ref.6541は製造期間が数年しかなく圧倒的に個体数が少ないので、欧米を中心にコレクターアイテムとして人気を博しています。

 

めったに市場に出ないプレミアムモデルで、オークションに出品されることもまれです。状態によっては1,000万~5,000万円の高値がつく場合もあり、まず入手は不可能といえるでしょう。

まとめ

ロレックスの「変わり種」「定番外し」といわれるミルガウスは、イナズマ針や多色の文字盤など各モデルが独自の個性を放っています。

 

デザイン面が注目されがちですが、機能性が高いのも魅力です。1,000ガウスの耐磁性があり、一般的な日用品の近くはもちろん、磁気を帯びやすい環境でも正常に動くのが特徴です。これだけの個性がありながら、デザインはシンプルなため幅広いシーンで活用できます。

 

人と被らないデザインの腕時計を求める方や、2本目以降に定番とは違うロレックスを手に入れたい方は、ミルガウスを選んでみてはいかがでしょうか。

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